スラム化防止のためにタワマン空き部屋の所有者に課税

近年、所有者がいても居住実態のないタワーマンションに対する課税が話題になっています。このような物件は、主に投資目的で購入され、実際には誰も住んでいないケースが多いです。特に都市部では、高層マンションが資産価値の上昇を見込んで購入されることが増えています。しかし、これが地域の住環境や税収に影響を与えていると指摘されています。

空き家のタワーマンションに課税

政府や自治体は、こうした状況に対応するため、空き家のタワーマンションに課税する案を検討しています。目的は、住宅を有効活用し、空き家問題を減らすことです。

例えば、居住実態がないと判断された場合、固定資産税の優遇措置をなくしたり、追加の税金を課したりする可能性があります。これによって、所有者が物件を賃貸に出したり、実際に住むことを促す効果が期待されています。

一方で、この課税案には賛否両論があります。賛成する人は、空き家が減り、地域の活性化につながると考えています。反対する人は、投資の自由が制限され、不動産市場に悪影響を及ぼすのではないかと心配しています。また、居住実態の判断基準をどう設定するのか、具体的な運用方法にも課題が残っています。

この問題は、今後の都市計画や税制に大きな影響を与える可能性があります。タワーマンションの空き家課税について、引き続き議論が進められていくでしょう。

神戸市でタワマン空き部屋の所有者に課税を検討

神戸市では、タワーマンションの空き部屋問題に対応するため、新たな動きが始まっています。2025年1月8日、「タワーマンションと地域社会との関わりのあり方に関する有識者会議」(座長:上村敏之・関西学院大学教授)が、久元喜造市長に対して、空き部屋の所有者に課税を検討する案を含む報告書を提出しました。この提案は、全国の自治体で初めてタワーマンションに特化した課税制度を導入する可能性があり、注目を集めています。

この有識者会議は、2024年5月に発足し、タワーマンションが地域社会に与える影響について議論を重ねてきました。特に、投資目的やセカンドハウスとして購入され、居住実態のない部屋が増加していることが問題視されています。

報告書によると、神戸市内のタワーマンションでは、高層階ほど住民登録のない部屋の割合が高く、40階以上では約33.7%が空室というデータも示されています。全体の約58%が居住実態のない状態とされており、これがマンション管理や地域社会に深刻な影響を及ぼすと指摘されています。

課税案の背景には、いくつかの課題があります。まず、空き部屋が増えることで、修繕や解体時の合意形成が難しくなることが懸念されています。これにより、適切な管理が行われず、将来的に建物がスラム化、廃墟化する恐れがあるとされています。

また、投資目的の購入が増えると、住宅価格が高止まりし、居住を希望する人が適正な価格で購入できない状況が生じています。これが住宅市場の混乱を招き、地域の住環境にも悪影響を与えると考えられています。

報告書では、空き部屋の増加を抑制するため、法定外税として所有者に新たな税負担を求める案が提案されました。

この税収は、マンション管理の専門家派遣や防災・防犯対策の整備などに活用される予定です。さらに、管理状況の届け出義務化や、災害対策としての非常用電源・備蓄への補助金創設も盛り込まれています。

久元市長は、「タワーマンションの問題を次世代に先送りせず、全国に先駆けて対処したい」と述べ、市民や事業者の意見を踏まえながら検討を進めていく意向を示しました。

ただし、この課税案の実現には課題もあります。市議会での条例制定や国の同意が必要であり、「空室」の定義や固定資産税との二重課税の懸念など、具体的な運用方法を詰める必要があります。それでも、神戸市の取り組みは、他の都市部でも増えるタワーマンションの空室問題に対するモデルケースとなる可能性があります。地域社会と住宅の持続可能性をどう両立させるのか、今後の展開が注目されます。